枕の理想の高さとは?正しい測り方や素材別の調整方法、高さ以外の選び方を解説

枕の高さが合わないと、首に負担がかかったり、肩こりに悩まされたりします。体に合わない高さの枕は、寝姿勢のバランスを崩したまま眠り続ける原因となります。快適な睡眠のためには、枕の選び方が重要です。枕の最適な高さや素材別の高さ調整方法を知っておきましょう。
目次
自分の身体に合う「枕の高さ」を知る方法
肩こりや首のこりを防ぐためにも知っておきたい「枕の高さ」。どのような方法で確かめることができるかを探っていきましょう。

頭部・頸部を自然に支える。理想的な枕の高さとは?
枕に厚み(高さ)があることは誰もが知っています。でも、その高さが人によって様々であり、一人ひとりに“理想的”な高さがあることはあまり知られていません。
一般的に「枕の高さ」はその枕の既製サイズ(大きさ)でしかないからです。では、自分に合った理想的な「枕の高さ」とは、どのように知ることができるのでしょうか。それを知るためには身体の構造に着目しなければならないのです。
二足歩行をする人間にとって、発達して重くなった脳を支えてバランスよく歩くことは大変な作業でした。二足歩行での活動に適合するため、人はある進化を遂げていました。それが脊柱にみられる「S字状カーブ」です。
脊柱は側面から見ると連続したS字状にカーブしています。これによって体重をバランスよく前後に分散させ、重い頭や身体を支えても負担の少ない“自然な姿勢”が保たれているのです。
実は寝ているあいだも、この「S字状カーブ」をキープすることが最も自然な寝姿勢なのです。枕はその自然な姿勢を維持するための最も大切なアイテム。そのためS字型の基点となる頸部(首の部分)を無理なく支えることができる「枕の高さ」が求められていたのです。
寝姿勢での理想的な高さのヒントはリラックスして立っているときの姿勢にありました。身体に一番負担が少ない姿勢の顔の角度……それは軽く顎を引いた状態の約5度。美しいS字状カーブが描かれている状態は、寝姿勢にも理想的なのです。寝ている状態では敷ふとんと頭部・頸部のあいだにできるすき間を埋めることが重要なポイントです。そこで枕の役割が重要になります。骨格・体型によって個人差のあるすき間を埋めるため、一人ひとりに適した「枕の高さ」が求められるのです。

寝姿勢によって枕の高さの測り方は変わる
枕の高さを測る方法は、寝姿勢によっても異なります。ここでは、仰向け寝、うつ伏せ寝、横向き寝それぞれの測り方を解説します。
〇 仰向け寝
仰向け寝の場合、枕の高さは壁際に立って測ります。背中・お尻・かかとを壁につけて、力を抜いた状態で自然に立ちましょう。次に首のカーブを測定しますが、測定する場所は首のカーブの一番深い部分と第7頸椎(首の付け根の一番盛り上がっている部分)の差を測ります。この数値が自分に合った枕の高さの目安です。
〇 うつ伏せ寝
うつぶせ寝の場合、実際に寝てみて首や頭に負担がかからない状態が、枕の理想の高さです。うつ伏せ寝は枕が高いと頭が不自然な角度になります。首に負担をかけない低めの高さが向いています。
〇 横向き寝
横向き寝の場合は、壁に肩を当てた状態で立ち、耳から壁の長さを測定します。実際寝てみて肩や腕が楽かも確認しましょう。
敷き寝具によって枕の高さは変わる
敷き布団やマットレスの沈み込みがどの程度かによって、枕の高さは異なります。素材のへたり易さや敷き寝具の状態により、枕の高さは微妙に変わります。反発力が高めのマットレスを使用している場合、沈み込みが少ないため、やわらかめのマットレスで試した高さよりも高めの枕がおすすめです。
一方、反発力が低めのマットレスは、実際に横になって体の沈み具合を確認しましょう。沈み込みが大きい場合、かためのマットレスで試した高さよりも低めの枕がおすすめです。
肩こりなどの身体の不調。高さの合わない枕で起こる睡眠トラブルとは?
理想的な「枕の高さ」があるとすれば、高さが合わないことで身体に変調をきたす可能性もある……と考えられます。そして多くの日本人が悩む「肩こり」。その原因の一つに「合わない枕の高さ」が関係していたのです。
身体に合わない高さの枕によって、バランスが崩れたままの寝姿勢を続けることにより、神経が筋肉疲労を察知して脳に信号を送ると……人は身体に違和感を覚えます。それが肩こりや腰痛を引き起こす「コリ」と呼ばれる状態です。
「枕の高さ」が合わないままでは、慢性的な“筋緊張状態”が引き起こされ、血流の悪化、筋肉疲労、筋肉細胞が傷つく原因になることは容易に想像できます。
枕の高さが合わないときの基本的な対策・高さの調節方法
枕の高さが合わない場合、枕の中身を増減したり、タオルで調整したりする方法があります。
〇 枕が低すぎると感じる場合
枕を高くしたい場合は、枕の中材を増やしたり、中材を頭をのせる中央部に寄せたりして高さを出す方法があります。また、頭や枕の下にタオルを敷くことでも高さを出せます。
〇 枕が高すぎると感じる場合
枕が高すぎる場合、中材を抜けば、高さを抑えられます。また、体の下に大判のタオルを敷くと、体が高くなるため枕との差を埋められます。肩の下にタオルを入れて、首と枕の間隔を狭めて高さを調整することも可能です。
枕の素材別。簡単にできる「枕の高さ」を調整する方法
枕の高さが重要なことを理解できたら、次はどのように調整できるのかを知りたくなるはず。
それを「素材別」に探っていきましょう。
〇 パイプなど“独立素材”の場合
枕の詰め物の中でも、パイプなど小さく独立した素材を“独立素材”と呼びます。ポリエチレンフレークやビーズ、そして日本人には馴染み深いそばがらなども“独立素材”の仲間です。
この独立素材の特徴の一つに、「高さ調整が簡単にできる」という点があげられます。例えば、枕が低い場合は、分散している独立素材を首のあたりにかき集めるだけで、感じ方が大きく変化すると思います。それでも「高さが足りない」と感じる場合は、枕の詰め物自体が足りない、もしくはへたっていることが想定できますので、新しく買い換える、詰め物を補充するなどの対策が必要です。「すぐにでもフィットさせたい」場合は、応急処置として枕の上にタオルを敷き、高さを調整する方法もありますのでお試しください。
また、枕が高すぎると感じている場合は、詰め物を取り出すなどして高さを調整してみましょう。枕の詰め物は数年でへたりますので、枕から出した詰め物は保存し再利用できるようにしておくと良いでしょう。
〇 低反発枕などウレタン素材の場合
ウレタン素材を使用した代表的なものに「低反発枕」があります。近年では使用している人も多い素材の一つですが、「ちょっと低く感じる」という場合には、タオルを使用すると良いでしょう。一枚、もしくは二つ折りにする、二枚重ねてみるなど、枕に敷いて容易に調整することができます。一方、「枕が高すぎる」と感じる場合、成型されたウレタン素材での調整は難しいので、新しいものを購入することをお薦めします。
高さ以外の理想の枕の選び方
理想の枕の選び方として、高さ以外に中身や枕の形から好みのものを探す方法もあります。
〇 素材・かたさ
枕は、中の素材によってかたさや耐久性などが異なります。粒わたや細かいビーズ、低反発ウレタンなどはやわらかく、深く沈み込む特徴があります。一方、大きめのビーズやパイプ、そば殻などは、あまり沈み込みません。寝るときは、リラックスできることが大切なため、好みの素材を選びましょう。なお、へたりにくさを重視したい人は、パイプ素材や高反発の枕がおすすめです。
最近の枕専門店では、通気性のよく洗えるパイプ素材が進化しています。フィット感の高いもの、低反発感触のものなどがあるので、素材バリエーションの多いお店を探すとよいでしょう。
〇 枕の形
首を支えやすい枕、寝返りしやすい枕など枕の形によって、適した枕は異なります。首から頭をしっかり支えたい場合は、首と頭のカーブに合わせて作られた枕を使いましょう。
自分に合った枕は、首への負担が軽減されるため、肩こりに悩む人におすすめです。定番の長方形だけではなく、肩にフィットするよう肩口にカーブがついたものや、横向きに特化した形などもあります。どれもご自身の睡眠環境によって選ぶことをおすすめします。どれが自分に合うかわからない方は、枕専門店で相談してみるのも一つの手です。
〇 自宅で洗濯できるか
枕についた頭皮のフケや垢などの汚れやにおい、雑菌などが気になる人は、自宅でお手入れしやすい枕を選びましょう。枕によっては、自宅の洗濯機で丸洗いも可能です。ダニの餌となるフケや垢は、枕に入り込みやすく、枕カバーだけで防ぐことは困難です。ニキビや不快な臭いの原因にもなるため、枕は定期的に洗うことをおすすめします。
関連記事:枕の洗い方は?素材別のお手入れと洗う頻度、干し方なども解説
〇 枕のサイズ感・寝返りのしやすさ
枕の大きさは、寝返りのしやすさに直結する大事なポイントです。寝返りしても頭が落ちないよう、寝相が大きいと感じる場合や体の大きな方、ゆったりと眠りたい方は、横幅がある枕を選びましょう。寝返りがしにくい枕を使うと首や肩、腰など、敷き布団と接触する側に負担がかかりやすくなります。スムーズに寝返りができる枕を選びましょう。
プロがおすすめする枕のメリット

誰もが求める満足のいく睡眠とは、いったいどういうものでしょう。睡眠文化研究所の調査によれば「朝、さわやかに目覚められた」睡眠に多くの人々が満足を覚えるようです。ですが、首都圏在住20〜50代の男女日勤者の睡眠について調査(「健康と睡眠に関する実態調査」2006)したところ、約70%の人が睡眠不足や不満を感じており、朝、さわやかな目覚めを実感している人はわずか17%しかいませんでした。
では、満足のいく睡眠のためにどのようなことができるでしょう? 何かと忙しい現代人にとって「睡眠環境を整える」ことは意外に取り組みやすく、また大変重要な要素であるといえます。睡眠環境の改善といっても取り組む方法は様々。例えば「枕を整える」だけでも、十分な改善につながることがわかっています。
50〜59歳の健康な女性22人を対象に枕についての検証を行った調査(国際睡眠学会連合 第5回学術大会における睡眠文化研究所発表2006年9月)では、枕の高さが身体的な負担と起床時の回復感を左右するという結果が出ています。具体的には、対象者に、首のカーブを計測してフィッティングを行い、高さを適切に調整した枕と、それより2cm高い枕を使った場合の「眠りの質」を追跡。結果、2cm高い枕では腰の痛みを2.8倍多く感じ、1.5倍多く疲れを感じたことがわかりました。これにより高さの合った枕が、朝起きたときの疲労回復感が高い人が立証されました。
つまり、オーダーメイドの枕は、睡眠環境を整え「眠りの質」をより高めるために、取り組みやすい解決方法であることがわかりました。
プロが計測する枕の作り方とは?

自分に合った枕を作る場合、それをサポートしてくれる専門家の存在は欠かせません。枕についてのみならず、眠りに関する専門の知識を習得していることで睡眠について安心して相談できるといえます。
ロフテーのピローフィッター®は一人ひとりに合った枕選びをサポートする、いわば“枕のプロ”として専門の知識を習得しています。そのピローフィッター®による枕の作り方を参考にしてみましょう。
〇 まずはコンサルティング
首のカーブの深さを計測し、その結果を元に適切な高さを踏まえた上で、普段の眠りについてお話を伺います。
〇 次にフィッティング
計測した高さを元に、実際に枕をあてて様子を確認し微調整します。さらに詰め物の素材選びも重要なポイントです。対象者の嗜好も反映させなければなりませんので、素材の持つ特質に加えて香りや使い心地も確かめます。
このようにして初めて「満足のいく枕」が完成し、睡眠環境を整えられるのです。
枕は大切な人へのギフトにも最適
最適な枕を使用することにより、睡眠環境が整い、毎日の快適なスタートをしっかりサポートできることがわかりました。この喜びはご自分にとっても最高のご褒美になるでしょう。そして、その良質な睡眠での喜びを大切な人への贈り物にすることもできるのです。
ロフテーの「枕ギフト」は、贈られた人ご自身で枕の高さと中身の種類をセレクトできるセットです。より使いやすくなった計測スケール(頚椎弧スケール)や、ハガキやWEBでのオーダーも可能になるなど、贈られた人の満足度を高める工夫もいっそう向上しました。ぜひ良質な睡眠の喜びを共有してみてはいかがでしょう。